川越商工会議所と川越市自治会連合会が署名活動を行った

上記の用紙が今年の年初頃に回覧板で回ってきたとの情報を得て方々を探し回り、コピーではありますがこちらを入手しました。
ご覧の通り、2019年(令和元年)11月に川越商工会議所と川越市自治会連合会が主宰して、川越線の早期複線化を実現するための署名を開始していました。用紙は市内の各自治体に配布され、川越市西部だけでなく、南部の寺尾地区や中央部の旧市街地といったかなり広い範囲を回った模様です。
【7/3 15:50追記】
川越市の広報誌のバックナンバーを確認したところ、1980年(昭和55年)〜1981年(昭和56年)にかけての国鉄川越線複線電化促進協議会や市民へのアンケートに関する記事を発見しました。以下の記事においてまとめております。
参考URL : 川越トレイン | 川越線複線化運動の過去 1980年(昭和55年)の川越市広報より

毎年2月頃に川越市・さいたま市・埼玉県の3者でJR東日本へ川越線複線化の要望を出しており、これについては各市議会・県議会の議事録で確認していました。そしてそれに対するJR東日本の消極的な返答も、毎年同じような文章で帰ってきていました。
しかしこの新聞記事にもあるように、川越市では南古谷駅周辺の市街地拡張を、さいたま市では西大宮駅周辺の開発を進めています。また、新型コロナウィルスCOVID-19の感染拡大のさなかでも川越駅周辺や大宮駅周辺のマンション建築ラッシュが持続しており、沿線の人口の増加が持続するのはほぼ間違いないため、利用客数も当面は微増か現状維持を続けることは明白です。
今年2月の埼玉県の要望書は特に力が入っていた
参考URL : 埼玉県議会八高線・川越線沿線活性化議員連盟がJR大宮支社へ要望書を提出
先述のアンケートの新聞記事が出た翌日、埼玉県議による超党派の埼玉県議会八高線・川越線沿線活性化議員連盟がJR東日本へ要望書を提出しました。
こちらもやはり荒川橋梁架替を好機としての複線化早期実現を狙った内容となっており、川越商工会議所や川越市自治会連合会と基本的な方針は一致していました。おそらく川越市選出の中野県議や山根県議らを通じて足並みを揃えたのではないかと思われます。
県議連から大野知事へ荒川橋梁架替及び複線化に関する協議会設置を要望
参考URL : 県議会八高線・川越線沿線活性化議員連盟から大野知事へ要望書を提出
さる2020年(令和2年)6月19日に、先述の埼玉県議会八高線・川越線沿線活性化議員連盟が大野元裕埼玉県知事に対し要望書を提出しました。
内容ははっきりしていませんが、川越市・さいたま市・埼玉県・国(国土交通省)・JR東日本の5者による荒川橋梁架替及び複線化に関する協議会の設置と、その調査に関する費用の計上が主な内容であると思われます。
これに対して大野知事は前向きな姿勢を示し、先述の5者それぞれの協議に対する意向確認を行い、更に川越市・さいたま市の調査に関する意向を確認して定まった時点で予算計上も対応すると明言したとのことです。
【6/28 18:52追記】
署名は6/19までに63,399人分集まったとのことです。
参考URL : https://ameblo.jp/kenken-thubame/entry-12605437003.html
JR東日本が複線化に対して消極的になっている理由が不明確
荒川橋梁架替をJR川越線複線化実現に向けたターニングポイントと見て、市民と財政会が一致団結し、JR川越線の早期複線化実現に向けて具体的に動き出しました。
しかし、JR東日本だけは、現時点でまだ消極的な姿勢を崩していません。これはおそらく、費用負担が非常に大きいためであると考えられます(複線化に伴う費用は原則として鉄道事業者が負担する事になっています)。
JR東日本が消極的になっている理由として「現在の利用客数では複線化する必要がない」「採算が取れない」と繰り返しています。しかしこれに対しての具体的な数値や見通し・見積もりを公表しておりません。
参考記事 : 川越線紹介 その3 輸送密度と利用客の傾向
上記の本ブログの過去の記事でまとめている通り、川越線の川越〜大宮間の1日あたりの通過人員は9万人に迫り、年々数百人ずつ増加しています。
ここで非常に単純な計算をしてみましょう。現状、川越線の川越〜大宮間は、区間電車も含めて上下約150本が運行されています(上下対照なダイヤではないため、ざっくりと計算します)。9万人を単純にこの本数で割ると、1本あたり600人を輸送することになります。この区間を走るE233系7000番台や東京臨海高速鉄道70ー000系の乗車率100%(座席・つり革・手すり・車両中央部まで埋まった状態)での輸送可能人数が約1600人なので、600人というのは約38%の乗車率になります。乗車率40%で大体全ての座席が埋まっている状況で、場合によっては立っている人が1人〜2人出る程度です。
1日を通じての平均値がこの数値で、昼間と早朝夜間は川越線との乗り換えがしやすい中間部以外の乗車率が10%以下となっていることを鑑みれば、朝夕ラッシュ時は平均の倍近い数値となっていることは明白です。
加えて、昨今の新型コロナウィルスCOVID-19の感染拡大防止方針の1つである「ソーシャルディスタンスの確保」の観点から、座席にも空白をもたせ、なるだけ個人同士が接しない車内環境の確保は、乗客のみならず乗務員の安全確保の観点からも必須です。
従って、この状況が「増発の必要がない」という判断につながる根拠を、JR東日本は明確にすべきだと考えます。
一方で、採算性を考えてみましょう。
1人が川越線内で運賃150円程度払ったと計算すると、1本600人で運賃収入が9万円となります。電車の消費電力は非常に少なく、1キロあたり2kWh前後として換算すれば、1キロあたりの電気代はおよそ30円程度となります。川越〜大宮間は16.1キロですから、加減速によるオーバヘッドを考えて17キロとして換算しても、1本あたり最大510円です。もはや誤差の範囲ですね。
参考URL : 電車の「電気代」そもそもいくら? 技術の発達で電力消費量は減少傾向
全ての運行に運転士と車掌がついて、1本1乗務あたり3000円×2人として6000円の人件費がかかります。後述の通り、これが1日最低3本とすると、1日1万8千円です。
また、E233系は10両1編成でおよそ12億円、30年償還として毎月約334万円積み立てるとすると、1編成につき1日あたり約12万円必要になります。これに加えてオーバーホールや清掃等に月60万円かかるとして1日2万円程度かかると換算すると、1日に約14万円〜15万円程度必要となります。ここで1日あたり1日平均3本〜4本の運行に就くと考えて、最低でも5万円(3本分)積むと考えましょう。
そう考えたとしても、電気代・人件費・車両償還や修理に関する費用として1日あたり約7万円かかることになります。
最初に運賃収入を少なく見積もって1本辺り平均9万円程度としていますから、必要な費用を引いても全ての列車で2万円の黒字となっています。ここから更に広告費や諸雑費といったものを1万円引いたとしても、1日あたり150万円の黒字となっている計算です。
今後乗客が減少しない一方で車両や勤務等の効率化が図られていけば、この黒字幅は更に拡大していくことになります。
結び : JR東日本は賢明な判断を!
もちろん素人計算のざっくりな概算ですから、これらの試算については明らかにおかしいはずです。
ですから、JR東日本は、この素人計算を否定するような明らかな数値を詳細に公表して頂きたいと思います。個人の妄想や希望的観測であると断じるのであれば、そうであると明らかにしていただきたいです。その上で、改めて川越市・さいたま市・埼玉県と周辺の市民の要望を拒否していただきたいと強く願います。それができないのであれば、あるいは正しい数値上余裕があるのであれば、JR川越線の複線化を早期に実現していただきたいと感じる次第です。